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くし刺しにしちゃーうゾ★← 主に創作物を書いていく予定。気まぐれで版権物も書くかもね。
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ヴェラドニア軍・食堂(元・衛兵)ルーカの序章にあたるお話です。

これを読んでいただければ、ルーカのことが・・・・・・わかるといいな(オイ

1はルーカの幼少期のお話です。
そして、なっちゃん(仁田坂)さん宅のアレクシスさんをお借りさせていただきました。
かなり最後の方です。

※多少のグロい表現があります!苦手な方はお引き返しください!


あと変な試みのせいでカタカナのほとんどがイタリア語になっています。
・一覧
ヴェートロコロラート:ステンドグラス
トゥッフォ:ダイブ
ルモーレ:ノイズ
レット:ベッド
カポット:コート
レガーロ:プレセント
トルタ:ケーキ


―今、迎えに行くよ―
聞きなれた声が、響いた。
 
いつの間にか寝てしまっていたらしい。まだ、ハッキリしない頭を右へ左へ動かし、周りを見渡した。どうやら、自分以外人はいないようだ。
軍敷地に程近い緩衝地帯にある閑静な住宅街にひっそりと建つ教会の礼拝堂の中。装飾華美ではないその教会が自分は好きだった。異能が使えないヘタレ野郎といじめられたり、父や母に怒られたり、妹と弟と喧嘩をしたら、ここにきてひっそりと陰で膝を抱えて自分を落ち着かせるのが日課となっていた。
ヴェートロコロラートから差す光が橙色を帯びている、通りで人がいないわけだ。自分もそろそろ帰ろうと、礼拝堂の扉を開けようと―
「うわ!?」
したのだが、その前に誰かに開けられた。人がぞろぞろと入ってくる。自分は目の前の、おそらく扉を開けた人にトゥッフォしたままそれを見た。教会の扉が中からは押し扉でよかった。引き扉だったら今頃自分は悶絶していただろう。
いい加減トゥッフォした人から離れようとしたら、その前に両肩に手を置かれ、勢いよく引き剥がされた。そこでようやくその人が、自宅の向かいに住んでいるおばさんだと気づいた。
おばさんは肩で息をしている。いつも笑顔の人が、こわばった顔をしている。後ろからは悲鳴が聞こえてくる。明らかに異常な状態に、両肩が悲鳴を上げていても、ぽかんとおばさんの顔を見つめていることしかできなかった。やがて、息が整ったのか、おばさんがわななく唇を動かした。
「ルーカ・・・っあなたの、お父さんが・・・・・・っ・・・・・・」
 
 
父は、優秀な小児科医だった。医者に有利な異能は持っていなかったが、それでも優しい物言いで子供の心を開く話術、愛想のよさ、医者という忙しい仕事でも家族のふれあいを怠らない、近所でも評判が高い医者だった。
自分がイタズラをして、怒っても、最後には頭を撫で「もうやるなよ?」と笑って許してくれる。優しい父だ。
 
そんな優しい父がこんな異能を持っているなんて、実際に父の口から聞かされていても、信じられなかった。
 
この出来事が起こるまでは。
 
 
夜の帳が下りたころには、町中の見知った顔が教会の礼拝堂に集まっていた。ヴェートロコロラートから差し込む、寒空に輝く、満月の光のおかげで、暗い礼拝堂を見通すことができた。集まった人たちの人の多くは、体のどこかに深い裂傷を負っていた。あたりに立ち込める血のにおいで、恐慌状態に陥っている人々を司祭様たちが宥めている。自分は恐怖で足がすくみ、壁に体を預けていた。すると、突然目の前が翳った。
「おい!ルーカ!!オレの父さんや母さん、みんなをこんな目に合わせたのはお前のとーさんだろ!?なんとかしろよぉ!!」
「い・・・痛っ・・・痛いよ・・・っ!」
先ほどおばさんに強く掴まれていた両肩を、激しく揺さぶられて激痛が走ったが、それをしたのが学校でいじめてくる同級生だったので、抵抗らしい抵抗はできなかった。
そう、彼の言う通り、こんなにも多くの人を傷つけたのは父の異能のせいなのだ。
父の異能は、不安定で、ひとたび暴走してしまえば、父の意思など関係なく、周りの人間を無差別に傷つけていってしまうものだった。
みな、暴走した父から逃れるため、ここに避難して、軍からの救護を待っているのだ。
「そ、そうだ!ルーカが行ったら、あの暴走も止まるんじゃないか!?」
「そうだ、ルーカ!お前が行って止めて来いよ!!」
近所のおじさん、おばさんたちがいじめっ子の言葉に同調し、囃し立てる。
みなの恐ろしい視線が、向かいのおばさんの鬼のような形相で射抜くような目線が、怖いのに目線を逸らすことができない。
(こわい・・・こわい・・・そんなこと、できるわけないよっ!だって、母さんも、リチアも、フェリシアも、殺されたのに!!)
「やめなさい!こんな12歳の子どもを、盾にして恥ずかしくないのですか!人の道理に反します!!」
礼拝堂に祭られている十字架がキーンと響き渡った。司祭様の怒号に、礼拝堂内が静まり返る。司祭様の一人が、いじめっ子をやんわりと引き離し、ガタガタ震えている自分の頭を優しく撫でてくれた。いつの間にか、空は厚い雲に覆われて、ヴェートロコロラートから月の光が入らなくなくなっており、その司祭様の顔はよく見えなかった。
ゴロゴロゴロ・・・という音が、響き渡った、次の、瞬間―
―やっと会えるね―
「・・・え?」
ドォォォォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!!
声がどこから聞こえてきたか確認する前に、礼拝堂が振動した。雷が落ちたわけではない。首をめぐらせると、出入り口である扉が無残にも粉々に砕けていた。粉塵が消えても、暗がりのせいで、よく見えない。異常事態に周囲がざわめく。
空が輝き、その全貌が明らかになる。現れたのは・・・・・・
「・・・・・・大きな・・・鎌?」
父の姿は無く、そこにあるのは大鎌だけだった。しかも、なんとその大鎌は浮いるではないか。そして、ひとりでに動き出し――
「ぎゃあああああああああああ!!!???」
近くにいた男性の腕を切り落とした。
礼拝堂内に金切り声、絶叫、どよめきが錯綜する。その間にも大鎌は、白金に輝く身を振るわせ、刃に血を滴らせながら、人を次々と切りつけ、まっすぐこちらに向かってくる!
「ルーカ!逃げなさい!!」
助けてくれた司祭様に促され、奥へと走る。
 
短い四肢がもどかしい。これでは速く走れない。息が切れる。肺が苦しい。足がもつれる。速く、速く、速く逃げなければ・・・・・・
 
「うわ!?」
何かに躓いて転んでしまった。ようやく暗がりに目が慣れてきて、何に躓いたかわかった。服についた染みの正体も。
「あ・・・あ、あぁ・・・・・・」
腕、だ。切り落とされた腕だ、本、物の。腕から流れ出た血で白いブラウスが赤黒く汚れていた。自分のものではない血でも、身を竦み上がらせるには十分だった。
―どうして、逃げるんだい?―
「ぐはっ!?」
先ほどの声が聞こえて、振り返った瞬間見たのは、司祭様が大鎌の柄で殴られ、苦悶の表情のまま倒れる司祭様の姿だった。
じわり、じわりと大鎌は距離を縮めてくる。
(逃げなきゃ、逃げなきゃ!!逃げないと、弟のように手と足が切り落とされる!妹のようにお腹に空洞があけられる!母さんのように頭・・・を・・・)
考える暇などない、とにかく逃げるために、ガタガタ震える両足を叱咤し、何とか立ち上がる。その間にも、大鎌は間近に迫ってきていた。
助けてくれる者は誰一人としていなかった。みな、呆然とこの光景を見つめていた。
大鎌が一気に距離をつめ、刃を振りかぶる!
(もう逃げられない!!)
「うわあああああああああああああああああ」
そんなことでは防ぎきれないとわかっていながらも、反射で、守るために身を縮めて頭をかかえ、衝撃に耐えるために目はギュッと瞑った。
 
ゴロゴロゴロゴロゴロと空気を揺らす耳障りな音が響いた瞬間、体が浮いた。
目を開ける暇なく、体が投げ飛ばされ、教壇に打ち付けられる。
悲鳴も上げられない衝撃に、意識が飛ばされそうになるも、何とか目をこじ開ける。
(父・・・・・・さん・・・・・・)
稲光を受けて見えた姿は確かに、見慣れた、優しい父の背中だった。多くの足音が聞こえる。意識が遠のく。
父を取り巻いていく、青い制服の人たち、近づいてくる男、頬に大きな傷、そして――
 
「あああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああ――っ――――――!!」
父の断末魔。それが、最後に聞いた父の声だった。
 
 
ザァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァ―――――――――――――
雨が、まるで壊れたテレビの砂嵐のようだ。そのルモーレを聞きながら、自分は、完全に意識を飛ばした。
 
 
目が覚めたらいつも通り、笑っている父と母が、慕ってくれる妹と弟が、自分を迎えてくれたらよかったのに。
 
残念ながら自分は知っている。これが、現実だということを。
 
 
目が覚めたとき、自分はレットで寝ていた。真っ先に目に飛び込んできたのは白い天井だった。首をめぐらせると、左腕には点滴が打たれている。それを見て、ようやくここが病院だということに気づいた。窓から見える外の景色が銀色の世界だったが、病室は適度な暖かさで包まれていた。
目が覚めたことに気づいたのだろう、出入り口の扉横にある長椅子に腰をかけていた、男が近づく。彼の菖蒲色の瞳に、虚ろな目をした、自分が映った。
右頬の大きな傷、見覚えがある、そうだ、気を失う前に自分に近づいてきた男だ。あの時来ていた茶色のカポットは、室内であるからか、脱いでいた。
男はレットの傍らにある椅子に腰を下ろした。近くで見てわかったが、左の眉尻にも傷があった。
男は、アレクシス・ザシャ・ベイツと名乗った。制服を見て気づいたが、やはりヴェラドニア軍人だった。所属は実戦部隊と言った。
ベイツ殿から、この場所がシエル・ロアで一番大きい総合病院だと、その病院で自分が5日間眠ったままだった聞かされた。そして事の顛末、両親、妹弟が、父の能力によって殺されたと、父が死んだ瞬間、あの大鎌が消えたことも教えてくれた。
そのことを話し終えると、ベイツ殿は何かを、手に握らせた。拳を開いて確認する。母の手作りの、いつも父が肌身離さず持ち歩いていた、ロザーリオだった。父の遺品だと、言われた。それを渡すと、ベイツ殿は、席を立つ。
去り際に「・・・・・・大丈夫か?」と問いかけられた。
「大丈夫です」と答えた。自分は、大丈夫なのだ。五体満足で生きている。大丈夫じゃないはずが、ない。
 
 
たった5日間でも体は鈍ってしまうものらしい。それからリハビリを十数日やったが、精神に問題があるということで、一ヶ月は入院していた。
そして、寒さが少し和らいできたある日、自分の誕生日がやってきた。
レットの上で目を閉じる。浮かんでくるのは、いつものように、おめでとうという言葉が飛び交い、両親がレガーロをくれたり、妹弟がトルタをつくってくれたりして、自分が生まれたことを祝ってくれる情景。
 
だが、今年はそれがない。当然だ。自分は・・・・・・
その時、ようやく気づいた。自分が独りに、なって、しまったことを。今までは現実味が帯びていなかった。もうどこを探しても、父も、母も、妹も、弟も、いないのだ。
「ぁ・・・ああ・・・あ、あああ・・・・・・っ」
呼吸が上手くできない。涙はでなかった。嗚咽が漏れるだけだった。人は悲しすぎると泣くこともできなくなると、その時、初めて知った。
 
自分に残されたのは、父が働いて稼いだ貯金と、4人分の保険金、そして、自分が握り締めているこのロザーリオだけだった。

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