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くし刺しにしちゃーうゾ★← 主に創作物を書いていく予定。気まぐれで版権物も書くかもね。
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ヴェラドニア軍・食堂(元・衛兵)ルーカの序章にあたるお話第3章完結です。


3は衛兵時代から食堂に配属される、ゲーム開始手前の話です。

今回は引き続き、星舞さん宅のレジットさん
さらに雑子さん宅のトウガさん、ゆうなさん宅のセレナリアさん
をお借りしました。お貸しくださりありがとうございますm(_ _)m


なんか、色々軍についての説明とか追加されたけど、気にせず突き進んでおります←


毎度のごとく変な試みのせいでカタカナのほとんどがイタリア語。
・一覧
エネルジーア:エネルギー
ズメラルド:エメラルドグリーン


 
 
そんな日々が続いた、20歳になり、桃色の花びらが舞い始めたある日―なんとなく、桜桃と桜花のことを思い出してなんか、いない―のこと。
その日は異能を使った対人訓練だった。自分はこの訓練が一番苦手だった。訓練といえども人を相手にしなければならなく、自分の異能が人の命を脅かしてしまうかもしれないという思考が頭に掠めと、どうしても動きが鈍ってしまう。そのせいで、テイシア殿に「けしからぁんっ!」という、怒号が飛ぶ回数が増えるはめになる。そう、
「けしからぁんっ!フェリッリ!!そんな鈍い動きで相手を捉えられるわけがないだろう!」
こんな風に・・・・・・。
「一体いつになったらわかる!貴様には一から軍人の流儀を・・・・・・」
・・・立派なご高説は聞き流した。熱弁をするテイシア殿を無視し、自分の手に収まり、不気味に輝く、黄金色の大鎌を見つめる。自分には確信があるのだ。
(これは・・・危険なものだ)
嫌な確信だが。そんな自信があるにもかかわらず、暴走する条件はわからないままだった。なんせあの事件以来、一度も大鎌は暴走していない。いや、暴走しては困る。意思を強く持って、制御しなければ――
「フェリッリ、いつまで地に片膝をつけている気だ。しゃきっとせんかっ!次だ!」
テイシア殿の言葉で思考の海から引き上げられる。どうやら長いご高説は終わったようだ。
立ち上がり服にについた埃を掃ってから、ようやっと次の対戦相手を見て、瞠目した。
「なんだよ。ヘタレのルーカくんと戦わないといけないのかよ~」
「文句を言うなっ!ほら何を呆けている、フェリッリ!」
「・・・・・・はい」
あの、いじめっ子だ。先が三つ又になっている槍を振り回して遊んでいたが、視線を感じたのか、にやにやと意地の悪い笑みをこちらに寄こしながら構えた。
こちらも大鎌を構える。
大鎌に描かれている十字の模様は、黄色に染まっていた。
 
同じ柄の長い武器だが、突きが専門の槍と、斬ることが専門の大鎌では、立ち回りが違う。
「ふっ・・・!?」
「へっ!遅ぇよヘタレ!!」
ガキィン!キン!キン!
鎌は重い刃があるので、薙ぐにしても引く動作必要となり、時間がかかる。突くにしても、射程も短い。対して、相手の槍は刃の部分が少なく、軽い。何度も懐に飛び込まれては柄で、槍を弾くという行為を繰り返している。その気になれば柔軟な体躯で、槍を避け、懐に入ることもできる。槍の弱点は、懐に入り込まれたら、隙が大きくなることだ。だが、
キン!キン!キン!
(・・・・・・っ)
どうしても懐に入り込むなどできなかった。相手の攻撃が怖いからではない。自分が、相手を傷つけてしまうのが、怖いのだ。たとえ、いじめっ子が相手でも。
ゼダーンッ!
仕方なく、刃の反対側の先端についているエネルジーア銃で牽制した。
「おいおい当たってねぇ、ぜっ!」
突きの連続を転がって避ける。
(駄目だ。銃弾も、当てられないっ。当てたら、当てたら・・・・・・)
あの時の光景が浮かぶ、父の背中、そして父の首を刎ねる――
「おらよ!!」
「!」
槍の柄で弾かれ、大鎌が手から離れる。
カランカランカラン・・・・・・
腰を上げ、大鎌に触れたとき、首に冷たい感触がした。確認しなくてもわかる。槍の刃だ。
「ははっ「人殺しの息子」になってもお前のヘタレさは変わらねぇなぁ!」
高笑いをするそいつを横目で睨む。
この、自分を、他の誰かを馬鹿にするこの笑いが、こいつが、たまらなく――
(憎らしい・・・・・・)
―憎らしい―
心の声と重なったそれに聞き覚えがある。ぞくりとして、大鎌を凝視する。白金の刀身に自分の顔が映る。ズメラルドなはずの瞳が、血のように赤く染まっているのが見て取れた。
―じゃぁ、消してあげるよ―
 
――目の前が真っ暗になった。
 
 
暗い、暗い、光がまったく届かない。まるで海の底のようだ、と思った。
『――っ――』
耳を澄ませば声が聞こえる。振り向いた先にいたのは――
『父さんも、母さんも、なんだよ・・・・・・「お兄ちゃんだから、お兄ちゃんだから」って・・・』
膝を抱えてこちらに背を向け、縮こまるかつての自分が朧げに光っていた。
(こ、れは・・・・・・)
『だいたい、リチアもフェリシアも「前世の記憶がある」とかいう変な異能で全然妹弟っぽくないじゃないか。ボクをいつもは子ども扱いするくせに、おねだりしてくるし・・・・・』
あの時の光景が頭に駆け抜ける。そうだ、あの事件の日、両親は妹と弟のわがままは許したのに、自分のわがままは許してくれなかった。「お兄ちゃんだから我慢しなさい」と言われた。本来なら、頼られるのが好きな自分は「お兄ちゃん」という言葉が誇らしいと思うのだが、その日は違った。いじめっ子たちに散々コケにされて傷ついていた時に、そうやって言われたことは、自分が嫌われたと思った。家族の顔を見るのが怖くなって、静止の言葉も聞かず、家を飛び出した。
『父さんも、母さんも、リチアもフェリシアも、みんな嫌いだ・・・・・・』
―嫌いなの?―
(なんなんだ、この声は、なんで・・・・・・)
『・・・・・・誰?どこにいるの??』
―ボクはキミの味方だよ。今はちょっと遠いところにいるかな―
『??遠いところ?』
なんで――
―うん、それより、家族のこと嫌いなの?―
俺と、同じ、声なんだ――
幼い自分は気づかない。その異常さに。確かに似た声の人はいるが、山彦のようにここまで同じ声の者はそうはいない。
『・・・・・・うん、みんなボクのことなんて・・・・・・嫌いなんだ。だからボクもみんなのこと、嫌い』
(違う、そうじゃない!)
心の中で叫ぶが、幼い自分に聞こえるはずもない。
そう、自分はこの先を知っている。今まで思い出せなかったいや、無意識に思い出そうとしなかったこの先を――
―ひどいね。傷ついたね。ボクがなんとかしてあげるよ―
『・・・ホントに?』
―うん、ボクが―
(やめてくれ・・・やめてくれっ!!)
頭を振って耳をふさいでも、声は頭の中に直接響く。
―キミを傷つけるもの全部―
ああ、この先を、自分は、知っている。
 
―消してあげるよ―
その声は、今の自分の声と、同じ、だった。
 
 
「誰か・・・っ・・・「僕」を、止めてくれええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
叫ぶと同時に、直接触れられてもいないのに、まるで投げ飛ばされたような感覚に襲われた。そのままなすすべなく、数m飛ばされ、レンガ壁に叩きつけられる。
「――っっ!!」
あまりの衝撃に呼吸が詰まり、悲鳴も上げずに倒れこんだ。
薄れゆく意識を必死にかき集めて、面をあげる。
まず視界に入ったのは、こちらに険しい顔を向けているテイシア殿。先ほどの強烈な突き飛ばしは、十中八九、彼の異能によるものだろう。
そして――そして次に見たのは、自分の手から離れ、いじめっ子の首元すれすれで地面に突き刺さる大鎌。十字の模様は、橙色だった。
(よかっ・・・・・・た。俺は、殺して・・・い、ない・・・・・・)
それを確認して、意識は、途切れた。
 
 
再び、海の底のような闇の中。朧げに光るのは父と母と、レットに青い顔をして寝かされている、5歳くらいの自分の姿。
『ルーカの異能は危険だ』
『あなた、このままではルーカが・・・・・・』
『母さん、安心してくれ。私の異能は「誰かの異能を自分に移す」ことができる。それを使えば、ルーカの異能を抑えることができる』
『でも、それではあなたが・・・・・・』
『私は大丈夫だ。必ず、大切な息子を・・・ルーカを守ってみせる』
映像は強い光を発して消えた。
その会話で全てを悟った。幼い自分が使い方を誤らないよう父が、あの大鎌を遠ざけていたことを。向かいのおばさんから父の異能が暴走したとしか聞かなかったのに、母と、妹弟が死んだことを、しかも、死因まではっきりわかったのか。そして、軍人に取り囲まれて見えてなかったはずの、父の最期がわかったのかを。
(あの大鎌が元々俺の異能だったから・・・・・・あの大鎌を通して・・・・・・)
見ていたのだ。聞いていたのだ、断末魔を。
両腕で肩を掻き抱き、俯く。家族の最期の声が、頭に直接響く。
(全部俺が・・・俺のせいで・・・父さんも母さんもリチアもフェリシアも・・・)
あの声に頷いてしまったから、家族は、みんな、殺されて――
(俺は、生きていていいのか?家族を死に追いやった俺は・・・・・・)
きつく、きつく、抱きしめる。まるで幼い頃に戻ったようだ。
『・・・・・・そうか、私たちの未来は、そう出ているのか』
はっとして周囲を見渡すが、今度は姿が見えなかった。声だけが響く。
『ええ、そう、見えました。今より一ヶ月の間に、私たちは・・・・・・』
『母さんの「先見」異能は外れがないからなぁ・・・・・・』
『お父さん・・・』
『母さん・・・』
『!リチア、フェリシア聞いていたのか・・・・・・』
『私たちお兄ちゃんの役に立ちたい!』
『兄さんに少しでも楽にさせてあげたい!』
『だって、「前のお兄ちゃん」は優しくしてくれなかった』
『兄さんは僕たちのわがままを聞いてくれた!美味しいパスタやピッツァ、マカロンを作ってくれた!だから・・・・・・』
『2人の気持ちはわかった』
『おいで、リチア、フェリシア』
『私たち、みんなで、ルーカを守ろう』
『『うん!』』
『ええ、守りましょう、みんなで、ね』
それっきり声は聞こえなくなった。
 
(俺は、こんなにも愛されていたのか)
ロザーリオがあると思われる場所に手を当てる。当然、夢だから感触はない。だが、心が少し、温かくなった気がした。
(父さん、母さん、リチア、フェリシア・・・・・・)
この命は自分だけの命ではない、家族みんなの命だ。
その命を、無駄になんて、できない。
(・・・・・・愛している、今でも)
 
 
 
 
医務室の窓から差し込む満月の光が、プラチナブロンドの髪を照らしている。エメラルドグリーンの目を瞬くと、瞼から涙が一筋零れ落ちた。
ルーカは初めて、家族を思い、泣いた。
 
 
医務室にいた医師から言われ、レジットを訪ねたルーカに彼から渡されたのは、衛兵から食堂への異動の辞令だった。理由は異能を使う機会の多い衛兵では、仲間の命を脅かす異能は危険すぎるとのことだった。
(まぁ、そんなことになるだろうと、わかっていたけどな・・・・・・)
今、ルーカは食堂の入り口に立っている。体が資本となる軍人は、大食らいが多く、食事時より前もって大量の料理を作っておかなければならない。ついさっき辞令を渡されたにもかかわらず、深夜での仕込みの仕事がルーカに割り振られていた。異能を使わないのはいいが、食堂だと否が応でも、多くの人に関わらなければならない。そのことに憂鬱な気持ちになりながらも、ルーカは食堂へと一歩踏み込んだ。
 
「あー君が新入り?俺はトウガ、よろしく」
(何が楽しくてニコニコしているのかわかんねぇけど、こういうやつほど危険なんだよな・・・・・・)
「セレナリア=ディアスですの。よろしくですの!」
(ベッラだけど、ちょっと抜けてそうだな・・・)
2人に対して失礼な印象を思う。
「・・・・・・衛兵から食堂へ配属になった、ルーカ・フェリッリだ」
ルーカはせめてもの抵抗で、余計な関わりを生まないように、愛想なしに名乗る。
「さぁさぁ挨拶もすんだことだしさっさと作業始めるよー。他に3人いるけど、時間が惜しいからシフトが被ったときに、それぞれ聞いといて」
「え、あ、おい!作業内容は!?」
「作業しながら教えるから、ほらキリキリ働く!」
「これがメニューです」
愛想がないことを気にも留めてないトウガに背中を押され、厨房に移動しながら、セレナリアからメニューを渡された・・・・・・のだが、
「おい」
「何、足止めないでよ」
メニューを見たルーカはあまりのショックに立ち尽くした。
「・・・・・・なんでパスタ料理が入ってねぇんだよ?」
「パスタ料理が出るのは稀ですの」
ルーカに衝撃が走る。
「はぁ!?パスタがないなんてここは本当に食堂なのか!?」
ルーカは信じられなかった。自分自身が毎日食しているパスタが!食堂にないなんて!
「ちょっと流石にそれ言いすぎだから。今まで気づかなかったの?」
「今までは毎日三食全部自分で作ってた。・・・・・・パスタがないなんて・・・納得できねぇ」
ルーカは人が多く集まるところはできるだけ避けているのだ。もちろん、人が多く集まる食事時の食堂などもってほか。そんななか、食堂にパスタ料理が並ぶことが少ないという、ルーカにとっては異常事態に、気づくはずもない。
「ほら、拗ねてないで腕を動かす!」
ルーカは沈痛な面持ちのまま、包丁を握らされた。
 
ルーカは考えを改めなければならなかった。トウガについては予測していたが、抜けていると思っていたセレナリアまで、新入りをコキ使うとは完全に予想の斜め上だった。やってきた年月が違うということもあるだろうが、仕込みを終えた時点で、ルーカはくたくただった。しかしそんな状態でも、片手間にパスタソースを作る、というパスタに対するいらない情熱だけは忘れなかった。仕事終わりにエスプレッソで一服している時に、セレナリアから切り出される。
「そういえば、ルーカさんは2日間眠り姫だったんでしたら、【ゲーム】の話はご存知ないんじゃありませんの?」
「は?あ、え、【ゲーム】?」
【ゲーム】という言葉のせいで、すっかり突っ込みをいれるポイントを完全に見逃したルーカは、机の向かいに座りミルクティーで同じように一服している、セレナリアに視線を向ける。
「なんでも、シエル・ロアの新たな統治組織を選抜するそうですの。組織一体となって【ゲーム】に参加しないといけないそうですの」
「・・・食堂には関係なくないか?」
「そうとはいかないみたいだよー?うちのリーダー、法による絶対的な秩序をつくるーってかなり張り切っているみたいだからね」
カウンターに両肘をついているトウガがやや呆れ気味に言った。
(折角、異能を使わなくて済む食堂に配属になったっていうのに、【ゲーム】なんていうふざけたものに参加しねぇといけねぇなんて・・・・・・)
エスプレッソに目を落とす。凝って映るルーカの瞳が一瞬、赤く光った。
(・・・・・・)
目を凄めると、それは瞬く間に消える。
ルーカは思う。
 
どうかあの大鎌が人の命を屠るようなことがないように、と
 
 
 
(終)

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